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マレーハコガメ (Cuora amboinensis) ―ダレル セネーク 及び クリス タバカ DVM(獣医学者)
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(Translated by Yasunori Tanaka)
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(Cuora amboinensis)
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Cuora amboinensis
amboinensis (DAUDIN 1802)
Cuora amboinensis cuoro (SCHWEIGGER 1812)
Cuora amboinensis kamaroma (RUMMLER & FRITZ 1991)
Cuora amboinensis lineata (MCCORD & PHILIPPEN 1998)
このケアシートは、マレーハコガメの一般的な飼育方法です。最適な飼育方法を確立する為には、更なる研究が不可欠です。
通称名で「アンボ(Ambo)」と言われるマレーハコガメ (Cuora amboinensis)は、現在(2002年9月)、中国南部において、食用や薬用として市場に出回っている中では、(スッポンなどではなく)硬い甲羅を持つカメとして、最も普通に見られます。ほんの数年前、この状況はクサガメ(Chinemys reevesii)に当てはまっていましたが、クサガメの大量捕獲には税金がかけられるようになり、そのためマレーハコガメがクサガメに取って代わる形になりました。食用や薬用として市場で見られる、圧倒的にたくさんの個体群のマレーハコガメが、運命的にも生き物たちの中から、人工的な管理に耐えるたったの数種の生き物の一つとして選ばれている、というように、人工的な管理によく耐えるという性質を反映する結果となりました。このため、マレーハコガメの市場で、それが外国産、または地元産のペットの商取引に渡る個体がずっと少なくなりました。このケースでは、マレーハコガメという種類での商取引が大規模であるため、ペットショップでそのカメが普通に売られているのを目にすることがあっても、それは非常に小さな割合しか占めていません。
マレーハコガメの、典型的な成体は普通、長さ20
cmほどですが、例外的に30
cmの大きさに達する個体もいます。できることなら是非、人工飼育下の繁殖で生まれた個体を買いましょう。食用として市場に出回るなどの目的で、野生から捕ってこられたものは、例外なく大きなストレスを持っていたり、寄生虫にやられていたり、脱水状態に陥っていたりで、アジア市場のカメ類に詳しい獣医によるケアがすぐに必要な状態です。最初にカメを手に入れる際に必要な医療費を考えると、人工繁殖下の個体のほうがずっと低コストですみます。不幸なことに今現在では、マレーハコガメの人工繁殖下の個体のうち、更に繁殖がなされることは、ほとんどありません。
マレーハコガメには4つの亜種があります。しかし基本的な飼い方は、どれも同じです。マレーハコガメという通称名の一部に「ハコ」という言葉がついていることは、これまでの長い間、呪わしいことでした。このことだけで区別されたため、恐らく輸入されて間もないマレーハコガメが、他のカメよりもストレスが溜まった状態で、それで脱水症状も強いという状態が続いてきたのです。マレーハコガメには蝶番(ちょうつがい)がついており、それが「アメリカハコガメ属」のものと同様なので、「ハコ」ガメと呼ばれるようになったのです(他の南アジア産のカメにも、同様に蝶番を持つものがたくさんいます)。この言葉のために、多くの飼育者が陸棲のカメとして飼っていました。しかし、これは間違いの中では多くを占めるものです。特に、脱水状態だったり、寄生虫を持っていたりする、輸入されて間もないマレーハコガメの場合はそうです。マレーハコガメは水棲傾向が非常に強い種類なので、水棲ガメのものと同様の飼育設備で飼育しなければなりません。もしこの種のカメが、蝶番のある他の種類のカメのことを考えたり、比較したりしなければならないなら、格好の例として挙げられるのは、やはり蝶番のあるドロガメ属(Kinosternon)で、やはりTerrapene 属、つまりアメリカハコガメ属よりも水棲傾向が強いカメです。
マレーハコガメの屋内飼育 – マレーハコガメは、言葉の選び方において最も正確に言えば、「半水棲」のカメです。野生では、カメたちは大部分の時間を水中で過ごしていますが、陸上に上がって動き回り、餌を食べるということも知られています。子ガメはほとんど完全に水棲で、水から離れるのは、主に甲羅干しの場合です。成長するにつれ、やや陸生傾向が強くなりますが、水場から離れることはなく、水から外へ出ていることも滅多にありません。人工飼育下では、マレーハコガメは一般に水棲のカメとして扱われており、大きな水槽(観賞魚を飼うような)によく適応します。マレーハコガメの屋内飼育に最も便利なのは、非常に大きな水槽か、小さな子供用のプールを使う方法でしょう。マレーハコガメは、水場にいてくつろぐ生き物ではあるものの、他の典型的な水棲ガメと比較する限りでは、泳ぐのは全く不得手です。私は、子ガメには水の深さを5 cmかそれ以下にして、水の底に後脚で「立って」息をするために、難なく水面に届くようにするのがいいと思います。マレーハコガメが大きく成長すると、それに合わせて深くしていくことができます。しかしどの成長段階においても、水が甲羅の長さよりも深くないところに、隠れる場所や陰になる場所を用意しなければなりません。もし、このタイプの配置をカメが利用するのであれば、カメの飼育している場所の片側に、甲羅干しのための乾いた場所を作ってやりましょう。
水棲種の子ガメを飼う他の方法として、我々が最もよく用いているのが、装飾や彩色などの飾りのない「傾斜タンク(原文“slant tank”)」を使う方法です。大体60 cm×40 cmの衣装ケースで、片方につっかいをつけて、底を傾けます。結果として、最も低いところで5 cmの水深を確保し、もう片方の浅い部分を乾いた陸場になるようにします。飾り付けがないので、基本にして頻繁な飼育場の掃除が、たやすくできます。ポリ塩化ビニールのバルブを、タンクの排水や掃除が楽になるように、水のある片側に取り付けましょう。それは簡単にできます。これらに付け加え、マレーハコガメの子ガメに、安全感を与えるために、実際の植物としての水草、または作り物のそれを飼育場に植えることはできるでしょう。しかしこの場合、(作り物でなく)植物としての水草は、与えられていない分の食料の一部になるかもしれません。
マレーハコガメが大きくなるにつれ、飼育場の水深も深くしていかなければなりません。
大体6 cmかそこらの大きさになると、マレーハコガメはそういった「傾斜タンク」から、本当の意味での水槽に移らせましょう。このサイズのマレーハコガメに手ごろな大きさの水槽は、20ガロン水槽、つまり75 cm × 30 cm の水槽です。それでもまだ大きくなれば、水槽の大きさも拡大していかなければなりません。20 cm ~ 25 cmの水深は、6 cmから、典型的な成体の大きさである20 cmの間のマレーハコガメにはちょうどいいでしょう。
水質は非常に重要です。前出の「傾斜タンク」の水はとても浅いので、フィルターをつけようにも実用的な方法はありません。この時期は、頻繁な水替えは、不可欠です。マレーハコガメが成長した、或いは成体になったものであれば、我々は筒型の外部式の濾過装置をお勧めします。それは簡単に掃除でき、最高の水質が得られるからです。水棲ガメに伴う問題の多くは、少しのお金と時間を工面して、高性能の濾過装置を買えば防げるのです。健康なマレーハコガメは、理想とは正反対の環境にも、本当に丈夫でよく耐えるものですが、やはりできるだけ好ましい状況を用意してやりましょう。マレーハコガメには、慢性的な病気、それも完全に「一掃された」ものではない個体もいます。それは、問題が悪化、或いは繰り返し発生することになるでしょう。その中には、一時的に標準に近いがそうではない状況に置いたことが、その原因である場合ですらあります。
マレーハコガメは熱帯産のカメであることから、水温は25~28度に維持しなければなりません。マレーハコガメは非常に甲羅干しを好みます。自然界では木の丸太や岩の上で甲羅干しをしているところも、しばしば見られます。甲羅干しの場所を飼育環境にも与えるため、金物屋にあるような、反射板のついた、クリップのついたランプを、飼育環境の乾いているほうの一端に設置しましょう。またその設置の際には、甲羅干しの場所が32度かそこらになるように高さを調節して設置しなければなりません。飼育環境にはまた、UVB(中波長紫外線)を供給するため、フルスペクトルの蛍光灯も設置しなければなりません。UVB源は、ビタミンD3(カルシウムの代謝に必要)の生合成に欠かせません。もしよければ、このライトの設置に、水銀ランプを用いてもいいでしょう。これにより、甲羅干しのための熱と、UVBの供給の両方の要求に適います。
著者たちは、管理がより楽にできるよう、水場には底に何も敷かないほうがいいと思います。大きな飼育場の陸場の部分には、イトスギ材の敷きわらを敷くとうまくいきます。マレーハコガメは甲羅に湿度が必要なため、穴を掘りたがるものです。もし陸場になにか床材を敷いているのであれば、どんな種類のものであれ、砂利を用いていないかどうか、注意してください。砂利はマレーハコガメにとって、よく誤食してしまうものなのです。このような傾向は、特に白い砂利や、コンクリートを作るときなどによく使われる玉砂利を用いた場合、強く現れます。
餌. マレーハコガメの子ガメは、与えられる餌がいろいろあっても、非常に短時間で慣れて、食べるようになります。子ガメに餌を与えすぎないように注意してください。そうしないと不格好に成長するという結果になるものです。私たちは、成長の速い子ガメには、毎日一度、わずかずつ餌をやるか、やや多めに隔日に与えることをお勧めします。マレーハコガメの子ガメは、肉食性が非常に強く、昆虫、イモムシ、魚を旺盛に食べますが、いくらかの植物も食べるものです。ミミズは、特にお気に入りの餌になります。もし魚を与えるときは、生きた魚が一番いいでしょう。生きた魚は更に、カメが追いかけることで運動させることにもなり、また精神の刺激にもなるでしょう。アオウキクサのような水生植物は、カメの隠れ場所になるばかりでなく、ちょっとした餌にもなるでしょう。成長するにつれて、マレーハコガメは植物質のものを食べる割合が高くなる傾向にあります。コイやナマズの餌と同じように商業的に売られている、多くのカメの餌は、少しタンパク質が多めで、その他の生き物用の餌のほうがいいようです。また、マレーハコガメの適切な餌を考慮するなら、様々な補助的な餌(野菜や草類、果物、昆虫)を一緒に与えることができます。
追加的にカルシウムの栄養補助を行なうのは不可欠です。粉末カルシウムは全ての餌に振り掛けても構いません。もし屋内飼育の個体ならカルシウムと一緒にビタミンD3も入っている栄養補助を、屋外飼育の個体ならD3なしで、カルシウムだけのものを与えることをお勧めします。生きた魚や、ネズミなどげっ歯類をまるまる与えているなら、カルシウムやビタミンはそれで既に、たくさん与えられているでしょう。イカの骨も、もしかじりたがるようでしたら、与えてみられてはいかがでしょう。もし市販のカメの餌に含まれていないのであれば、追加的なマルチビタミンを与えることは不可欠です。適切な脂肪の代謝を含む、何段階ものプロセスに、なくてはならないからです。魚は冷凍すると、その過程でビタミンEとチアミン(訳者注 ・ 「チアミン」は日本では「ビタミンB1」と呼ばれることが多いが、本質的には同じものである)が破壊されるのです。これらはマレーハコガメの健康な状態を維持するために必要な成分です。もし冷凍された魚を与えていらっしゃるなら、飼い主の方は、これらの栄養成分を追加して与える必要があるでしょう。
屋外での飼育 –
皆様のマレーハコガメが、7.5 cmを超えたなら、外敵の入らないようにした屋外での飼育には、屋内の飼育設備を超えた、多くの利点があるので、飼育の選択肢として真剣に考えてみられてはいかがでしょう。安全な飼育場に子供用のプールを地面に埋め込んだものが実用的です。大きめの池に高性能の濾過器を使うと、皆様のマレーハコガメの住まいに、壮観な眺めを演出します。池の環境は、深いところでも50
cmまでの水深であるなら、そのような深さでさえ、マレーハコガメはうまく生育していきます。カメたちの「プール」の水際に沿って、岩を用意してやりましょう。段のように高さが変わるところを越えて、水に入ったり水から出たりするのが簡単にできるようにするためです。屋外の池は、地面に埋め込む形にしましょう。これは大きな温度の変動を避けるためです。この種のカメには、約50%が水場、残り50%が陸地、という飼育環境がよく合います。マレーハコガメは市販のペレットや、他の餌を、水中では一番よく食べます。屋外環境では、甲羅干し用の場所と共に、卵が産める場所を、かなり広く設けてやりましょう。このカメはコンディションが最高だと、毎年
複数回卵を産むからです。
医療と健康 :
野生から捕ってこられた、また輸入されたマレーハコガメに関連して、最も一般的に見られる問題は:
· アメーバ症、特にEntamoeba invadens(赤痢アメーバ)によるもの
· 外傷による敗血症、また二次的な問題としてのアメーバ症
· シェルロット(甲羅の腐れ。SCUD)
· 輸入されて間もない個体に見られる飢餓、そして脱水状態
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Anesthetized Cuora amboinensis being treated for shell rot. |
Fire damaged Cuora amboinensis |
この種のカメのことで、他の注目すべき問題が、交尾をする成体に見られます。成体のオスは、交尾をするときの傾向の点から言えば、ほとんど決まって攻撃的になります。オスのカメは求愛活動中また交尾中、文字通りメスの頸のところを引き裂いて傷をつけます。もしこのまま放置され、隔離されないままなら、頚部の皮膚、また筋肉に深刻な組織障害が起こるかもしれません。性別ごとに隔離し、数多くの隠れ場所を用意し、そして広々とした飼育環境を整えることが、繁殖の成功に重要となります。
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Anesthetized Cuora amboinensis |
マレーハコガメは冬眠をしません。お住まいの場所が熱帯でなければ、冷涼な気候の間は、屋内の暖かい環境を用意してやらなければなりません。
様々なカメの飼育の研究は、まだ進行中であることに注意してください。新しい情報が手に入れば、我々はその情報を、World Chelonian Trust(ワールド・ケロニアン・トラスト、www.chelonia.org )で公開していきます。カメをまじめに飼育している人は、同じカメを飼育している他の人からの援助を受けられることが、役立つものであることに気づかれています。飼育については、我々のメールコミュニティー(英語)で討論できます。そしてそれに参加するには上記アドレスからアクセスしてください。どうか我々と連絡を取り、World Chelonian Trustのメンバーとなられて、多くの益を得てください。
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